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母はボケ、俺はガン 著者: 関根進 |
ある日、突然の癌告知! 齢五八歳はモバイルノートを抱えて”独房病室”に駆け込んだ 長ーい結婚生活の中で、妻は夫に涙することが何度かある。 「パパが癌だなんて不公平だよ」 癌の告知という、あまりに理不尽な出来事に、いつもは楽天家で気丈な妻が ボロボロと大粒の涙を落とした. 電子メールに書き込んだ「癌」という文字に、いつもは冗談を飛ばし会っている 仲間も、しばしパソコンの前で絶句したという。 驚いたのは当の本人である. 六十歳を目前にして、己の胸元に糜爛した 食道癌が食らいつくとは、誰が想像しただろうか。 人生の一歩先は、やはり闇である. 安穏を夢見て、やっと描いた第二の人生の設計図はビリビリと引き千切られ、 頭の回路は、はっきりいって混濁した. 人生に好事魔多し! 「悪質な食道癌です」 医師が示した内視鏡写真を覗き込むと、人面にも似た グロテスクなドス赤い癌の塊がこちらを睨み付けているではないか。 一九九九年二月二十日に受けた、この告知から、これまでに経験したこともない 我が体内の疼痛との闘いが始まった. 長い治療生活の中で思い当たったのは、いまだに確くとした原因も治療法も 見当たらない魑魅魍魎ゆえに、癌との闘いは情報戦争に違いないということだ。 外科手術か、放射線照射か、抗癌剤投与かーー これをめぐって医学界は牛歩にも似た論争を繰り返している。 医師にとっては、まさに”医学情報戦争”の最前線なのである。 副作用の苦しみと転移の恐怖と言う海をもがき泳ぐ、悩める患者にとってはどうか? 患者にとっては、生死の不安を取り除くための”心理情報戦争”なのである。 一体、取り憑いた癌は治るのか、治らないのか. やっかいな大手術をするべきか、やめるべきか。 己のじんせいは、いったい何だったのか。 中略 更に耐えがたかったのは、抗癌剤による副作用の鈍痛、吐き気、下痢の凄まじさである。 大学病院の治療は問答無用の苦しみを癌患者たちに強要しているといってもよかった。 といって、完治する保証は少ない. やがて、体はガタガタになるはずである。 大病院のの治療法は、どこか間違っていないか? 残された人生を苦しまずに過ごすには、どうしたらよいのか? 「パパ、抗癌剤と手術は絶対にやめようね。抗癌剤を打たなくても、 手術などしなくても、必ず、治る秘薬を探してくるからね」 妻の哀願する姿に、見舞いに来たメール仲間たちが身震いした. 中略 本書は、齢五八歳にして突然、進行癌に取り憑かれた夫と、それを支えた妻、 そして中年メール仲間たちが仕掛けた、三ヶ月に及ぶ”泣き笑いの癌病棟脱出劇”でもある。 |